歓楽街のこの周辺。
けど路地裏に入ると別世界のように静まり返っている。
1人で居る人はまず居ないだろう。
言い伝えを知っているのなら…それに昨夜のこともある。
「沙季。神一族はいないね。」
「あぁ…」
目を凝らし人や気配、嗅覚で確認しながら巡回を進めた。
神一族は人間にとって好都合なものだろうが、その偽善者ぶりは凄い。
甘い優しいマスクを被り近づいてきた人間を喰らう。
ただ、滅多なことで私たちも会ったことがあるのは片手でたりるくらい。
「沙羽。この街に何か来た。」
呟いた沙季の言葉で私は気配に集中した。
明らかに人じゃない。
「神一族だね。」
私と沙季は合図を送った。
うなじの側にある桜の印章。
これに触れ合図を送る。
勿論鬼一族にしか通用しないのだけど。


