少し上から目線だけど沙季は言い返すのを断念して夜の街に再び足を入れた。
「いないねー」
「コッチ呼ばれてる」
私の手首を掴むと走り出した。
街のネオンが届かないほど裏路地にぐんぐん進んでいく。
それでもまだ塀は見えない。
ただ微かに何かの気配は感じられた。
それが猫と分かるのはすぐ後で。
「ミール?」
沙季が言うと弱々しく鳴く猫。
「どうしたんだ?」
ニャ-ニャ-
「何でだよ。」
ニャ-…ニャ-………
ミールと話した末に見上げた沙季の顔は般若のようで…
「さ、沙季?」
「…あぁ。神使いにやられた。」
「…警戒態勢突入。」
何の返事をするまでも無く、刻印を抑えお父さんに報告する。
「ミール…」
ミールを抱きかかえた沙季の腕の中には血塗れの猫。
ニャ-ニャ-……
また沙季と話していて詳細を詳しく聞いているようだ。
そのとき、
「猫1匹で2人の鬼が釣れた。」
さっきまで感じなかった気配が近くにいる。
そして、神一族だということも。
「その面覚えたからな。」
その男は攻撃もせずに何処かへと消えて行った。
「ねぇ沙季。放れよ。」
「そうだな。早く家に帰ろう。」
また沙季は私の手首を掴むと人目につかないように家路に着いた。


