恋愛優遇は穏便に

「ただのお茶ですよ」


「むつみさんが淹れてくれた特別なお茶ですよ」


「政宗さん……」


それ以上何も言えず、自分の席に向かい、今日の朝ごはんと昨日の夕飯の残り物を詰めた弁当を食べる。

胸が苦しくなる。

今日がクリスマスだから、なのか。

仕事が終わった頃のことを考えると、どう感情を抑えたらいいのかわからない。


「むつみさん、今夜ですけど」


強く言っているわけでもないのに、政宗さんの言葉に体が反応する。

箸を置き、政宗さんをみる。政宗さんの濁らない、まっすぐな瞳に体が動けなくなった。


「兄さんの仕事が終わったら連絡くれますか?」


「え、ええ」


「待ってますから」


「……はい」


政宗さんはおにぎりを食べ終え、カップのお茶を飲み干す。

カップとカバンを持つと、席を立つ。


「お茶、ごちそうさまでした。むつみさんの顔、みられてよかったですよ。それではいってきます」


そういって、政宗さんは事務所をあとにした。

穏やかな笑みを残しつつ。

一人になり、ため息が出た。

私が悪いのに。

私が政宗さんの気持ちに応えられてなかったのに。

あんなやさしい顔をしてくれるなんて。

残りのお弁当をかき込んで、カップに残るお茶を口に流す。

給湯室へ行き、お弁当箱とカップを洗いに行くと、さっき政宗さんの口にしたカップがきれいに洗われて水切りかごに置かれていた。