恋愛優遇は穏便に

12月中旬から下旬にかけて、新規の注文がたくさん入ってきた。

受注票の責任者の欄をみると、北野さんの名前よりも政宗さんの名前のほうが多かった。


「五十嵐くん、すごいわ。新しく参入してきた会社に目星をつけて営業かけたのね」


マークスカイタワーか、と北野さんがつぶやいている。

その名称にドキっとする。

駅前の高層ビルの名称が、マークスカイタワーだったからだ。


「あら、この『マークスカイタワー』って、駅前の高層ビルの名前ね。あそこのビル、最近になって新規参入の会社が入ってきてるから」


「たくさん営業で仕事とってるから、栗林さんもうらやましがってましたよ」


視線が急に私めがけて飛んでいるのがわかる。


「頑張るはずよね〜、むつみちゃん」


北野さんは清楚な顔立ちなのに、顔を緩ませてニヤニヤと笑い、つられて高清水さんもニヤついていた。


「し、知らないですって」


知らないといえば嘘になるか。

そのオフィスフロアで政宗さんと出くわしたんだから。


「わたしもこれぐらい増えればいいんだけど。五十嵐くん、本当にすごい子だわ」


北野さんは感心して、わたしも頑張るか、といって営業へ向かっていった。


「あの勢いなら、いいところまで行くんじゃないのか、って栗林さんもいってましたよ」


データの処理をしながら高清水さんがうらやましそうな顔つきでちらりと私をみていた。