あれは8月の中旬。

夏休みの終わりに起こったことだった。


「夏休みは僕と過ごしてもらいますよ」


夏休みが始まる金曜日の夜、政宗さんの自宅へ向かった。

派遣から紹介された会社でちょっとしたことがあって、濱横営業所の所長、五十嵐政宗さんと結ばれることになった。

好きだったけれど、三十路の私より3歳年下ということもあってなかなか切りだせなかった。

自分に踏ん切りがつかなかったこともあって、なかなか政宗さんに近づけなかったけれど、政宗さんの作戦のおかげで仕事のことも恋愛のことも解決に至った。

二人とも我を忘れ、二人だけの時間に没頭していった。

遅く起きた土曜の昼下がり、政宗さんと一緒に街中デートを楽しんだ。

うだるような天気の中、汗をかきながらも手をつなぎ、食事にいったり、木陰で休憩したりしたけれど、ちょっと横を向くとやさしく笑う政宗さんに何度も胸がときめいた。

政宗さん御用達の紳士服屋さんの通りに面した場所に宝石店があった。

夕刻に近づいてはいるものの、まだまだ空気は熱せられて暑い。

涼みがてら中に入りましょうと、政宗さんが私の手を引いてくれた。

白い建物に中も白く、入口近くには銀色の星を模した飾りが天井から床に細長くいくつも垂れ下がっていた。


「これにします?」


政宗さんが透明のショーケースを指差す。

そこには銀色のネックレスがあった。


「これはちょっと」


「そうですよね。冗談ですよ」