私を見届けたかったのか、北野さんは営業へ向かった。

少しでも明るく振舞おうとしても、同情されているのか、高清水さんは憐れみの表情で私に接してきた。

たまっていた仕事を片付け、昼休みに入った。

高清水さんはすぐにコンビニから戻り、一緒にお昼を食べた。


「まったく、所長も所長ですよね。もう少し森園さんにやさしくしてあげればいいのに」


「いいんです。悪いのはこちらのほうですから」


「え? 森園さんが、所長に何かしたんですか?」


さすがに真実は語れない。

語ったところで解決できるわけはない。


「これ以上はちょっと。でも私が悪いのは確実ですから」


「それでも好きな人だったら許したりするんじゃないですかね」


許してほしいと甘えた気持ちになったけれど、今日のあの様子では問題の核心に触れたらきっと終わるんだろう。

でも、いつかは言わないといけない。

早く政宗さんにすべてを話したい。

すると、会社の電話がなり、私が電話に出た。


「もしもし、郡司ですけど。このあと午後に少し時間とれますか?」


「え、何かご用ですか?」


「最近ご無沙汰していた、社内訪問で様子を見にいこうと思いましてね。お時間はとらせませんから」


「……わかりました」


「森園さん、派遣の人がくるんですか? もしかして、所長が……」


電話を切ると、すぐに高清水さんが心配そうな声をあげた。


「大丈夫ですよ。派遣の仕事の件ですから。午後、少し時間をいただきます」


「わかりました。今日はそんなに忙しくないので」


そういってくれただけでありがたかった。

少し照れた顔で話してくれた高清水さんが頼もしく思えた。