恋愛優遇は穏便に

重厚なつくりのロビーに入り、エレベーターに乗り込む。

なじみの階につき、手を引かれて一番奥へと進んだ。

政義さんがポケットから鍵を取り出し、扉を開ける。


「さ、中へ入って」


ようやく手が解かれると政義さんに促された。


「どうしたの? 入って。じゃないとここでキスするよ?」


「……わかりましたっ」


しぶしぶいうことを聞き、中へ入る。

洗練された玄関は変わりなかった。

政宗さんとここで愛し合ったんだなとドキドキが止まらなかった。


「どうしたの? 何を思い出してるの? ボクとのキスだったりして」


そういえば、この家ではじめて政義さんとキスしたんだった。


「ち、違います」


「まあ、いろいろ話したいことがあるから。まずはご飯を食べよっか」


ダイニングへ連れて行かれる。

テーブルの上にはすでにテーブルマットが二つ敷かれていた。

窓の外はカーテンが開けたままで外の夜景が一望できた。

わたしは窓際の外が見える席に案内された。

ちょっと待っててと、隣の部屋に行くと、スーツの上着を脱いでネクタイを緩めた政義さんが帰ってきた。


「たいしたもんじゃないけど」


ダイニングテーブルにある椅子に座ると、冷蔵庫からいろいろと皿に盛られたものが出てきた。


「ちょっとあっためなおすから、よかったら食べていて」


「はい。いただきます」


簡単な前菜だけどと、政義さんが前振りしてくれた。

きれいに盛られたサラダを食べていると、しばらくして、スパイスのいい香りがしてくる。