ハロー、マイファーストレディ!


車で連れて行かれたのは、征太郎の地元にある事務所だった。
通常街中で見かける政治家の事務所といえばビルの一部を間借りしているようなものが多いが、征太郎の地元事務所はそれとは趣が大きく異なっていた。

築三、四十年ほどの一軒家。
ごく普通の家族が住んでいるような大きさの純和風建築だ。
玄関の脇には小さな庭まであり、楓の木が何とも言えない風情を醸し出していた。
本当にここが事務所だろうか、と思うような風貌だが、玄関の引き戸の横には控えめに「高柳征太郎事務所 自由進歩党関東第十九支部」の看板が掛けられていた。

隣地の駐車場に車を止め、谷崎さんの後に続いて中に入ると、なるほど確かにそこは“事務所”だった。
おそらく居間を改装したのだろうか、玄関を入ってすぐ正面のスペースはガラス張りになっており、数台の事務机とパソコン、会議テーブルが置かれていて、中ではスーツ姿の男性が二人ほど働いていた。

それでも、基本は木造の一戸建てのスタイルらしい。玄関から靴を脱いで上がり、スリッパに履き替える。

谷崎さんは私を扉の前に留まらせて、一人だけ事務所の中に入ると、若い方の男性と何やら話をしてから、もう一人の年輩の男性にそっと耳打ちをした。
若い方の男性は、鞄を持って玄関の方に歩いてくる。
すれ違うタイミングで会釈されたので、私も静かに会釈を返した。
どうやら彼は外出の用事を指示されたらしく、そのまま靴を履いて玄関から出ていってしまった。

谷崎さんと年輩の男性は事務所スペースから出てくると、私を玄関すぐ脇の部屋へと促した。
どうやら、そこは応接間らしく、豪華な飾り棚や小ぶりなシャンデリアが一昔前のお金持ちの家を想起させた。
部屋の中央にはこれまたレトロな雰囲気のソファセットがどっしりと鎮座していて。
窓からは純和風の庭の景色が見えて、楓の枝がちょこんと顔を覗かせていた。
一見ミスマッチなようだが、これはこれで調和している。