「真依子、お腹すいてない?」
瞳から、何とも呑気なメッセージが届いたのは、頭を抱えてソファーにうずくまってから、すぐだった。
こんな時に、空腹の心配って…
サロンにマスコミは押し掛けてはいないのだろうか。
いずれにしても、こちらの状況を知らせるため返信しようと、もう一度スマホの画面を見た。
「おーい、真依子?」
なかなか返信しない私を心配したのか、間の抜けた呼びかけるだけのメッセージを送ってくる。
一緒に送られてきた、これまた変な顔で首を傾げているウサギのスタンプが可笑しくて、ついプッと吹き出してしまった。
「何よ、このウサギ…」
緊張感がないにも程がある。
だけど、ああ、瞳はあの時もそうだったなと懐かしく思い出した。
騒動の後、学校も変わった私に連絡をしてきた友達は、瞳だけだった。
祖母の家で夕飯を食べながらテレビを見ていると、携帯が小さく鳴ってメールの着信を知らせた。
何気なく見てみると、ディスプレイには懐かしい友の名前。
もしかすると、心配してくれているのかも。
そう思って、メールを開けば、そこにあった文章に思わず唖然とした。
「マイコ、元気?来週、クレープ食べに行こ(ハート)」
なんじゃそりゃ。
オイオイ、瞳さん、送る相手間違えてませんか?
いや、でも、マイコって書いてあるしな。
半年ぶりに送られてきたメール。
あんな騒動があって転校までしたのに、どうしてか昔と全く変わらない内容。
しかも、クレープって。
本当に、どうでもいい用件だ。
私は、思わず、
…笑った。
いかにも、瞳らしい。



