「あー、たすかる。さすが、真依子。」
「最初からこうすればよかった。」
食べづわりで、常に何かを口にしていないと気分が悪くなると言う瞳は、遠慮なくフルーツに手を伸ばす。
他に欲しいものが無いかと聞けば、炭酸飲料だと言うので、ストックしていた炭酸水を取り出して冷やしておく。
今夜は、久々にゆっくりと話をしようと彼女を家へと呼び寄せた。彼女の体調に気をつけながら、またいつものように女二人で夜を明かすつもりだ。
「私も食べ過ぎないようにしないと。せっかく選んだドレスが入らなくなりそう。」
「それは、困るわ。あれは神がかり的に似合ってたから。肌荒れも気をつけなさいよ。私、ボロボロの肌にメイクするのイヤよ。」
来月挙げる予定の結婚式では、瞳がヘアメイクをしてくれることになっていた。その頃には安定期に入るため、悪阻も軽くなっていると彼女は言うが、私は内心心配している。きっと、とんでもなく体調が悪くても、瞳はその高いプロ意識ゆえに頑張ってしまうだろう。
「瞳もとっても綺麗だった。写真だけなんて、ホント勿体ない。」
「ありがと。私はいいの。式なんて大変すぎて、とても大きいお腹抱えながらやれないわよ。」
瞳と透さんは、結婚写真を撮っただけで、式を挙げなかった。子どもの為に大事を取ったこともあるが、何やら複雑な事情があるらしく、大々的に式を挙げるわけにはいかなかったらしい。
それでも、瞳のご両親には絶対に彼女のドレス姿を見せたいと、透さんが彼女に内緒で撮影を企画して、こっそり相談を受けた私は、サロンで瞳が密かに熱い視線を送っていたドレスを教えた。
撮影当日、ドレスを前に驚きながらも涙をこぼした彼女の顔は、たぶん一生忘れられない。
底なし沼のように、ダメな男に嵌まって
いく彼女の手を必死に掴んでいたのが私ならば。
一生恋をしないと決めていた私の、背中を押し続けたのは彼女だ。
ともに、しあわせになれる未来があるのならば、互いの努力はそれだけで報われる。
きっと、親友とはそういうものだ。



