『真依子ちゃん、今まで迷惑掛けてゴメンね。瞳のダメ男好きは俺のせいだったんだよね。』

聞けば10年も前に二人は付き合っていたらしい。詳しくは聞いていないが、お互いに気持ちを残したまま、この10年を過ごしてきたのだろう。

『安心して。俺は、もうダメな男は卒業するつもりだから。』

その、初めて見せる裏表のない笑顔には、何の根拠も無いはずなのに、妙に説得力があった。

『これからも、よろしくね。俺のことは、透君って呼んでね。』

ヘラヘラといつものように軽く告げながらも、彼の目は真剣にこちらを見据えていた。私も「よろしくお願いします」と言葉を返して微笑んだ。

きっと、大丈夫だ。
大切な親友を、今の彼になら安心して任せられる気がした。


クレープとクリームの間に、新鮮なフルーツがゴロゴロと入っている。瞳はそのフルーツだけを器用に口に運んで、残りを私の前に差し出してきた。

「ごめん、やっぱり無理だった。」
「……じゃあ、なんでミルクレープにしたのよ。」
「だって、真依子が好きかと思って。一緒なら食べられそうな気がしたのよ。」

確かに、このミルクレープは私の好物だ。しかし、悪阻の真っ只中にある彼女には、全く受け付けられない代物でもあったらしい。重めの生クリームの層を見つめながら、今にもトイレに駆け込みそうな彼女に、呆れながら言葉を返した。

「確かに好きだけど、無理しなくても。ちゃんと二人で食べられるものの方が嬉しいわよ。」

私はミルクレープを冷蔵庫へと片付けて、彼女のためにと買っておいたフルーツを取り出した。部屋の隅に備えられたミニキッチンでカットして皿に盛り、彼女の前へと差し出せば、瞳は生き返ったように微笑んだ。