またしても同じような忠告に「ハイハイ」と笑って返事をして、電話を切る。
彼氏が出来るどころか、またどこかのダメ男に騙されて遊ばれたのだろうか。少し言葉を濁すようにして会話を終わらせた瞳が無性に気になったが、電話で問いただすようなことではなさそうだし、今は会って話せるような状況でもない。

とりあえずは、このまましばらくこの状況に耐えるしかない。
そう思いながらも、本当ににそうするしかないのだろうかと、さっきからずっと考えていた。

ただ、守ってもらうだけではなく、私にも何か出来ることはないだろうか。
事の発端は、私に復讐を持ちかけてきたあの久住という男だ。

先ほどから付けっぱなしのテレビでは、情報番組のコメンテーターが訳知り顔で、征太郎の事務所に地検の特捜部が捜査に入るのではないかと言っている。
だとしたら、たいした説得力はないかもしれないが、私にも何らかの証言ができるのではないだろうか?

そう思いついて、再びスマホを手にした時だった。

“着信 高柳征太郎事務所”

念のためと登録してあった番号が、ディスプレイに映し出された。

「はい、内海です。」
「真依子さん、突然すみません。」

電話を掛けてきたのは征太郎本人ではなく、年配のやさしい声の持ち主だった。

「大川さんですか?よかった、今、征太郎さんに連絡しようかと……」
「それならば、ちょうどよかったです。私も真依子さんにお願いがあって、ご連絡差し上げたのです。おそらく……あなたがお考えになったことと同じことを。」

大川さんは、私の言葉を遮るように力強く、それでいて、ゆっくりと落ち着いた声で切り出した。