透を送り出してから、大川と当面の対応策を練る。いち早く手を打たねばならないのは、真依子のことだ。
おそらく、マスコミは真依子の元へも押し寄せる。何とか他のマスコミが嗅ぎつける前に、真依子の安全を確保しなくてはならない。
そう思って、明け方から何度も真依子の携帯に電話を掛けるが、一向に繋がらない。今日は夜勤ではないから、寝ていて気がつかないのだろうか。家に迎えに行かせようにも、透が不在の今、安心して任せられる人間はいない。ようやく電話が繋がった時には、すでに朝になっていた。
その頃には、真依子も異変に気がついたようで、やや取り乱した様子で電話に出た。電話越しに、マスコミのインターホン攻撃が聞こえて、苛つくと同時に一抹の不安が過ぎる。真依子は、再びマスコミに追われる状況に耐えられるだろうか。
「真依子、君のことは、絶対に守る。」
自らの不安を振り払うように、あえて語気を強めた。格好付けたかった訳じゃない。ただ、自分の気持ちをただ純粋に伝えたかっただけだ。
「……俺の政治生命を賭けてでも、誰のことも犠牲にはしないと誓う。」
そして、他でも無い彼女に、俺の決意を伝えたかっただけ。
俺は、硴野とは違う。
多少の嘘はついても、人を切り捨てたり裏切ったりは絶対にしない。
だから、どうか。
もう少しだけ、信じてほしい。
俺は詐欺師なんかじゃないってことを、ちゃんと証明してみせる。
「坊ちゃん……」
携帯を耳に当てたまま振り返ると、神妙な顔をした大川が事務所の電話の子機を差し出していた。
慌てて携帯の通話を切る。真依子からの返事までは聞き取れなかったが、俺の言いたいことだけはちゃんと伝わったはずだ。
「硴野先生の秘書の方から、お電話です。」
俺が子機を受け取ると同時に、大川がわざとゆっくり告げた一言。同時に送られた意味深な視線に、俺は一瞬で状況を理解して頷いた。
「わざわざ連絡をもらえるなんて、随分と親切だな。」
保留ボタンを早めに解除して、わざと電話越しに相手側にも聞こえるように呟く。にこやかな口調だが、表情は険しいまま瞳だけで大川に目配せした。
こちらが調べる間もなく“黒幕”の方から誘いがきた。



