二人のやけにフレンドリーな会話に、俺の背で縮こまっている真依子はまたしても唖然としていた。
しかし、久々に再会した同級生の普通の会話としては、むしろこっちの方が普通だろう。
それに、校内でも軽いと評判だった二人は、当時からわりと仲はよかった。
「透、お前、ご主人様にオンとオフの切り替え方をちゃんと教えておけよ。」
「はは、教えたところで、無駄だよ。巧己が素顔を見せられる相手だと認められないと。」
「もう、20年近いつき合いだけど?」
「長さは関係ない。真依子ちゃんは会ったその日に見事にスイッチを切ったぞ。」
「すごいな。おかしな嫉妬をしてしまいそうだ。」
「まあ、巧己はいつも征太郎をからかいすぎだ。好きなのは分かるけど、それじゃあいつまでも片思いだぞ。」
気色の悪い冗談は聞かない振りをして、真依子に行くぞと目配せをする。
一通り挨拶を済ませたし、客寄せパンダの役割は十分果たしただろう。今日はこのまま切り上げる予定だ。
「では、私はこれで失礼します。」
相変わらず丁寧過ぎる挨拶を口にして、真依子の腕を掴んで歩き出した。背後では、まだ透と巧己の会話が続いていた。
「透も、そんな堅物政治家の秘書は辞めて、俺の秘書になればいいのに。毎日楽しいぞ。」
「やめておく。女との揉め事の処理は、こりごりだからな。」
じゃあなと軽く告げて、透が後から追ってくる。
その足音を聞きながら、俺は無性に苛ついていた。
よりによって、あの男の前で一瞬でも仮面が剥がれたなんて、大失態だ。
しかし、久々に再会した同級生の普通の会話としては、むしろこっちの方が普通だろう。
それに、校内でも軽いと評判だった二人は、当時からわりと仲はよかった。
「透、お前、ご主人様にオンとオフの切り替え方をちゃんと教えておけよ。」
「はは、教えたところで、無駄だよ。巧己が素顔を見せられる相手だと認められないと。」
「もう、20年近いつき合いだけど?」
「長さは関係ない。真依子ちゃんは会ったその日に見事にスイッチを切ったぞ。」
「すごいな。おかしな嫉妬をしてしまいそうだ。」
「まあ、巧己はいつも征太郎をからかいすぎだ。好きなのは分かるけど、それじゃあいつまでも片思いだぞ。」
気色の悪い冗談は聞かない振りをして、真依子に行くぞと目配せをする。
一通り挨拶を済ませたし、客寄せパンダの役割は十分果たしただろう。今日はこのまま切り上げる予定だ。
「では、私はこれで失礼します。」
相変わらず丁寧過ぎる挨拶を口にして、真依子の腕を掴んで歩き出した。背後では、まだ透と巧己の会話が続いていた。
「透も、そんな堅物政治家の秘書は辞めて、俺の秘書になればいいのに。毎日楽しいぞ。」
「やめておく。女との揉め事の処理は、こりごりだからな。」
じゃあなと軽く告げて、透が後から追ってくる。
その足音を聞きながら、俺は無性に苛ついていた。
よりによって、あの男の前で一瞬でも仮面が剥がれたなんて、大失態だ。



