「とにかく、慣れろ。」
「い、いきなり、手繋がなくても!」
「手ぐらいで慌てるな。今から、肩を抱く予定だ。」
「か、肩?え、いや、ちょっと待って。」
俺は、素早く真依子の手を引き寄せて、彼女の身体を腕の中に抱え込んだ。
もちろん、本気で何とかしないと、という思いからの行動だ。
でも、慌て出す彼女が可笑しくて、からかいたくて仕方ない、というのも少しはある。
肩を抱いてぐっと身体を寄せれば、「ひぃっ!」という色気のない悲鳴を上げてひきつる彼女の顔がより一層近づいた。
強気な性格に、堅いガード。
時には、この俺に対して毒を吐くことすらある。
でも、鉄壁の守りが崩されると、彼女は一気に陥落する。
頬を赤くして、こちらの様子をうかがっている真依子の目は少し潤んでいて、不安げに結ばれた形の良い唇が、どうにも俺の抑えきれない欲情を誘う。
どうしたことか。
考える間もなく、吸い寄せられていた。
おもむろに、彼女の唇に自分の唇を軽く合わせれば、予想外の行動に目を丸くした彼女と視線がぱっちりと合う。
「驚くなよ。慣れろよ。」
「そんな…急に…」
「じゃあ、毎回いちいちキスしてもいいか聞けばいいのか?」
「いや、そういうわけじゃ。聞かれても何て答えればいいやら…」
狼狽えているのか、ごちゃごちゃ言いながら、気まずそうに目を泳がせる彼女を抱き寄せ、耳元で囁く。
「とりあえず、まずは力を抜け。」
「む、むりっ!」
「無理って…仕方ない。じゃあ、後から文句言うなよ。」
言い終わらないうちに、逃がさないよつに彼女の後頭部に手を回す。
そのまま抵抗する間もない彼女に、やや強引に口付けた。
やや力ずくで奪った唇を、強めに吸って堪能する。



