ハロー、マイファーストレディ!


「おい、特技が…採血って。完全に仕事だろ、コレ。」
「人より得意なものって、他に思いつかなくて。」
「子供の頃、習字とかピアノとか、何か習い事してなかったのか?」
「そう言えば、スイミングスクールに行ってたけど、結局、泳げなくて…」
「学生時代の得意な科目は?」
「特にないわ。どの教科もまんべんなく、成績は平均くらいだったもの。」
「英語が話せたり、着物が着られたり…」
「するわけないでしょ。」

お互いのプロフィールを記入した紙を眺めつつ、俺はため息を一つ漏らした。

「わかった、特技は“料理”にでもしておけ。」
「あざとすぎない?わざわざ料理上手をアピールする女って。しかも、採血の方が、何倍も得意だし。医療従事者には受けるわよ。」
「ああ、もういい。特技は、採血で。でも、料理もあの程度作れれば、十分だろう。」
「素直に、おいしかったって褒めてくれてもいいわよ。」
「さっき、褒めただろう。」
「あの嘘くさい笑顔で言われてもね。」
「仕方ないだろう、橋元が居たんだ。」

夕食を食べながらの橋元との会話で、プロフィールの共有が急務だと悟った俺は、すぐに透に連絡して、取り急ぎ共有しておいた方が良さそうな項目をピックアップさせた。
送られてきた項目は、誕生日から始まり、趣味や趣向、最近の休日の過ごし方まで、たとえ数ヶ月でも恋人として過ごしていれば、知っていなくてはおかしい内容ばかりだ。
場所を二階のプライベートスペースに移し、お互いにまるで履歴書のような用紙を埋めていった。
完成したところで用紙を交換をして、あとは、これを互いに覚えればよいはず…だったのだが。

真依子が書いた内容は、およそ俺が期待していたものではなかった。
想像以上に、趣味趣向が違うらしい。
そして、それは彼女にとっても同じ様だった。