「…キール」
「ご、めん…泣かないって決めてたんだけど……」
私ってグイードを困らせてばっかり。本当に嫌になる。私って心まで醜いし、それを補う秀でた才能もない。反対にグイードは、顔も良くて性格は少ーし捻くれて変わっては、いるけれど女性でいう才色兼備ってやつだ。なのにそんな彼は、どうして私なんかを選んだんだろう?
「…すみません」
彼ときたらいつものような手応えがない。言い合いをすれば、いつもなら彼の巧みな言葉の方が勝つのに。謝らないで、謝らないでよ。貴方は何も悪くない。悪いのは私なのに。
「私こそ、今まで何もグイードにしてあげれなかった…。グイードは私に沢山のものをくれたのに、私は……」
私は貴方の役に立てましたか?
私は貴方を幸せに出来てましたか?
ううん、もっと幸せに出来た筈なのに。
「ねぇ、グイード。グイードは死んだ時…どんな感じだった?」
「そうですね…」
辛い事を聞いたのに顎に手をあてて考える彼は柔らかい表情で笑っていた。
「不思議と哀しくは、なかったですね…むしろ嬉しかった。ようやく死ねるのかと思うと、ようやくうんざりしていた世界から抜け出せるのかと思うと嬉しかったですね。」
そこで彼は一旦区切って私の涙を拭ってゆっくりと話した。
「けれど、貴方と会えないと思うと……哀しかった。この醜い世界で僕が唯一、愛した人。貴方に、もう触れる事が出来ないと思うと哀しかった…」
「けど、貴方は帰って来てくれたじゃない」
「えぇ、ですがもう終わりが近い」
哀しそうな辛そうな、泣きそうな顔を隠すようにグイードは私の顔を強く自分の胸板に押し付けて強く抱き締めた。
大切なものは何ですか?
(それは失くしてしまっても)(大切ですか?)