こんなにも時間を大切にしたいと思ったのは初めてだ。どんな時も私は毎日をなんとなく過ごしていたから。だからグイードが生きていた時に、もっとグイードとの時間を大切にしていたのなら、もう少しだけ哀しくならなかったのかもしれない。



「珍しいですね」

「…へ?」


グイードの問いに私は自分の手元のカードに視線をもどした。モノクロの床の上の黒い机で私とグイードはポーカーをしていた。彼ときたら先程から何度やってもロイヤルストレートフラッシュを打ち出してくる。もしや彼はイカサマの才能があるやもしれない。


「いつもの貴方なら負けそうになれば直ぐに“止める!”とか叫んで投げ出すのに」


「…そ、そんなことないよー」


くすくすと笑う彼に目を合わせられなくて下を向く。確かに彼の言うとおりかもしれない。私は、いつも恥ずかしいとか苦手だとか自分の事ばかり考えて自分の都合の悪い時には逃げ出す。だからグイードとの時間をあまり大切にする事が出来なかった。もっとグイードを笑わせてあげたかった。もっとグイードに幸せになって欲しかった。その手を引いてグイードを何処にだって連れていけたのに。


「キール」


「んー、何?」


「僕の事、好きですか?」


「え…なっ…………好、きだよ」


せめて今からだけでも少しずつ素直になりたい。だから私は素直に言ったのに!グイードときたら、何がおかしいのか口に手を当てて笑いを必死にこらえている。


「な、なんで笑うのよ!!」


「ふふっ……僕はキールを愛していますよ」


顔を真っ赤に染めたのは私の方。本当に嬉しい。


ポタリ。


ポタリ。



なのに私の涙は止まらなかった。だってもうすぐグイードはいなくなる。もう少しすれば、私に愛を囁いてくれる人は、いなくなってしまうんだ。いつもいつでも彼は私に欲しい言葉をくれた。どんなに辛い時もグイードが私を慰めてくれた。だけど私といえば、そんな優しい彼に何もしてあげれなかった。いつもいつも自分の悪い性格が出てきて何も出来なかった。ごめんなさいごめんなさい素直になれなくてごめんなさい。







君の笑顔もあと少し

(だからこの目に)(焼き付けておこう)