懐かしい声は何処から聞こえてくるのか分からない。

むしろ直接、頭に響くような声。


―…キール。



「……ど、して?」










―…キール。



「何処にいるの?」








―…こっちですよ、キール。




「何処…?」

















―…キール…。




「グイード?……グイードなの?」



何処にいるの?











「こっちですよ、キール」



すぐ後ろで囁くような声がして、私は振り向いた。淡い笑みを浮かべ、立っていたのは、いつものように綺麗な黒いスーツを着たグイードだった。そっと後ろからグイードは私を抱き締めた。彼は死んだ筈なのに何故か温かい。




「……て。ど、して…グイードがいるの?」


「貴方の事を愛しているから、ですよ」



「からかわないで…!なんで?どうして?……もしかして本当は死んでなかったの…?」



私の期待は簡単に裏切られた。彼の綺麗な目は僅かに曇って否定を表していた。



「僕は、本当に死にました」



「じゃ、あ…どうして此処にいるの?」



「貴方は今、夢を見ている。そこに少しだけ、ほんの少しだけ僕はとどまる事が出来る」



そうか。夢なんだ。私は夢を見てるんだ。なんだか滑稽だね。彼は現実じゃない。私がつくりだす幻影なんだ。泣かない筈なのに、ポロポロ涙が零れ落ちた。




「キール…」


哀しい顔をして今、私を抱き締めてくれている彼は幻なんだ。