【 千尋side 】




「…これは私の見間違いですか?」




「いや、事実だ。よく頑張ったな!」




小鳥遊さんと、鬼先と呼ばれる数学の先生のやりとりを聞いて、赤点回避したのは分かった。




…小鳥遊さん、すごい嬉しそう。
そんなに嬉しいわけ?




いや、補習がないのは嬉しいか。




教える、なんて面倒だしイライラするし。
なのになんで小鳥遊さんには教えるって、しかも自分から言ったのかよく分からないけど…。




あそこまで喜ばれると、良かったんじゃない?って嫌でも思うよね。




「ち~ひろ!」




「…何」




「相変わらず冷たぇな!親友だろ?」




親友、親友、というこの男は、
いつも俺につきまとってくる遠藤 秋斗。




同じく弓道部で、弓道やってる時と普段とで差が激しい。
でも、それが少し羨ましいかも。




「親友とか思ったことないから」




「はいはい、照れ屋さんだな~。
今日、赤点2人に絶対小鳥遊ちゃん入ってると思ってたけど、意外だったな!」




小鳥遊さんは無自覚だけど、意外と男子からの人気がある。らしい…。
遠藤がドヤ顔で言ってた。