「うーん、初日にしてこのダメージか」




次の日の朝、学校に来た私を見て言った雅ちゃんの一言が、コレ。




「…うーん、眠い」




「授業中寝ないようにね」




今までは自分の部屋こそすごく眠れて、
居心地がよかったというのに、今じゃ、なんか変。




「とりあえず、トイレ言って寝癖直してきなさい」




雅ちゃんにそう言われて、カバンを置いてからトイレに向かった。




「ねぇ、どうする?」




トイレに入ろうとした時に、中から女の子たちの声が聞こえて、自然と足が止まった。




「結子、岡本くんの事大好きだったじゃん」




結子…その名前に心臓が嫌な音をたてた。




遠藤くんとの会話が頭の中で何度もリピートされる。




〝杉本結子って知ってる?〟


〝実は杉本さんって千尋の事大好きで…〟


〝一番危ないのはその人かな〜って〟


〝…とりあえず、気をつけて!〟




隣のクラスの杉本 結子さん。
ということは、今トイレにいるのは杉本さん含めた3人って事だよね…。




「ほんと、許せないんだけど、小鳥遊すず?
あんな奴のどこがいいわけ?

……私の方が、ずっと岡本くんを想ってきたのに」




…あぁ、私は忘れちゃいけなかったんだ。




岡本くんが人気者だからこそ、
岡本くんに好意を寄せてる人が沢山いる事を。




どこかで恋が実れば、
どこかで終わってしまう恋もあるという事を。




私はただ、自分が幸せで、千尋くんの笑顔の原因になったのが嬉しくて周りを見てなかった。




杉本さんと同じ意見の人、同じような人なんて
学校中探せばきっと…たくさんいるのに。