「小鳥遊すずさーん!いますか?
いたら舞台上がってください!」
司会者の言葉に、会場がザワつく。
「その人今足怪我してるから、連れてきていい?」
岡本くんの一言で、会場の女の子の黄色い声援。
「是非!お願いします!」
司会者がそう言うと、完全に此方に向かってきてる岡本くん。
私の目の前に来てピタリと止まった。
「ちっひろ〜!お前やるじゃん!」
「うるさい」
遠藤くんに冷たく言い放ちながら、
またお姫様抱っこをされた。
「岡本、見直したわ」
「…あっそ」
くるっと向きを変えて舞台に上がらせられる。
下ろされたと思ったら、突然マイクの電源を切った岡本くん。
「突然顔を真っ赤にしながら走って泣いてた女の子がいて、きっとその時点で一目惚れしてた。
でも認めてなくて気になってついていったら図書室について、誰もいない図書室で1人で声を押し殺して泣いてた。
俺は図書委員だから、本とか入口で預かって中に誰にも入らせないようにしてた」
そんなことが……。
全然知らなかった。
「少しして静かになったと思って中に入ったら、その女の子は寝てた。
泣きながら、寝てたんだよね。」
……私、泣きながら寝てたんだ。
その時あったことが初めてのことで戸惑って、1人でどうしたらいいか分からなくて…それで泣いちゃって。
「小鳥遊さん……、すず。
好きだよ」
え、今岡本くん…。
私のこと〝小鳥遊さん〟じゃなくて〝すず〟って…
心臓がすごくドキドキしてる。
同時に締め付けられる。
岡本くんがマイクの電源を入れて私にマイクを向けた。
返事を聞かせてってことなんだと思う。