「悠んちがシングルマザーだったってこと、知ってる?」 「うん、それは聞いたよ。」 「悠は、5歳の誕生日、父親を亡くしたんだ。」 「誕生日?」 「うん。 職場から帰ってるとき、事故で…。 父親は、ケーキを大事そうに持ってたらしい。」 「そうなんだ…。」 「でも、父親が亡くなっても、悠は涙一つ見せず、笑顔でいた。 葬式でも笑顔だった。 それで、親戚からは変な目で見られてた。」 「泣かなかったの?」 「母親には自分しかいないって。 だから、俺が泣いたらダメだって。」