翌朝、スポーツ紙の一面にはユウの事故を知らせる記事が踊っていた。

小さな女の子をかばって全治2ヶ月の大ケガをしたことや、なかなか意識が戻らず、一時は危なかったことの他、事故を目撃した人たちの談話で“ユウは、なんのためらいもなく走って来る車から女の子を助けた”などと記されていた。

「大袈裟…。」

ユウは、タクミから差し出されたスポーツ紙の記事に目を通すと、照れ臭そうに呟く。

「あの女の子…小さい頃のレナと、少し似てたんだよな。だから、余計に助けなきゃって…体が勝手に動いたのかも…。」

「そうなんだ。やっぱりユウは、あーちゃんが大好きなんだねぇ。」

「うん…。」

「珍しく素直に認めた!」

タクミが驚いた声を出す。

「…うるせぇよ。」

ユウは少し赤い顔でそっぽを向く。

「でもさ、いいんじゃない?ユウはもっと素直に自分の気持ちを言葉にした方がいいよ。」

「なんで?」

「そうすれば、変に悩んだり不安になったりすることもないじゃん。たった一言で済むことだってあるんだよ。」

「そうかな…。」


ずっと心の奥に秘めていたレナへの想いや、見たこともない実の母親への思い。

出生の事実を知った日の気持ち。

育ててくれた直子の再婚を知らされた日の複雑な思い。

一言では言い表せないけど、ほんの少しずつでもいいから、レナに、自分と言う人間をわかってもらえたらと思う。

わかってもらうには努力しなければいけないと思うし、自分もまたレナをわかりたいと思う。

それにはきっと、レナが自分を信じてくれたように、何があってもレナを信じぬく覚悟が必要なのだとユウは思った。

(そうすれば、いつかは…。)