「この間…ユウと話したんだけど…。レナちゃんはユウから聞いてないかも知れない…。」

「何…?」

「ユウ…生まれたばかりの頃に、ユウを産んだ本当の母親に捨てられたって…。」

「うん…。直子さん…ユウの、お母さんから聞いた…。」

「そっか…。それでユウ…いつかレナちゃんにも捨てられるんじゃないかと、いつも怖かったって…。」

「うん…。」

「そんな親から生まれた自分は、一生一人の人を愛し続けられるのか、自信がなくて…レナちゃんに、結婚しようって、言えなかったんだって…。」

「……。」

「愛し合って、一生添い遂げる約束をして結婚したはずなのに、どうしてその間に生まれた子供を捨てて、他の男の所へ行けるのかわからないって…。結婚しても離婚したり、一度は添い遂げる約束をした人を忘れて別の人と再婚したり…結婚ってなんなのか、わからないんだって言ってた…。どんなに愛し合ってても、結婚して夫婦になると、何かが変わるんじゃないかと思うと怖かったって…。恋人同士なら、ずっと変わらず一緒にいられるのかも知れないって思ったら、レナちゃんに結婚しようとか言い出せなかったんだと思う…。」

「…うん…。」

「ユウ…レナちゃんを信じられなかったこととか、傷付けてしまったことを悔やんで…もうオレには生きてる価値もないのかも、って…。オレは生まれて来てはいけない子供だったのかも知れないって言うんだよ…。」

「そんなことないよ…。」

「だから、レナちゃんが言ってやってよ…。ユウは必要とされて生まれて来たんだって…。」

「うん…。」

(ユウは、生まれて来てはいけない子供なんかじゃない…私には、誰よりも大切で、必要な人だよ…。だから、お願い…生きて…。生きてさえいてくれたら、私のことはどう思ってくれてもいいの…。本当の別れがどんなことか、私は知ってるから…。)