病院に着くと、ユウはベッドの上でたくさんの機器やチューブに繋がれ横たわっていた。

「ユウ…!!」

レナはユウのそばに駆け寄りユウの手を握る。

(お願い…どこにも行かないって約束したでしょ…?!もう、私を一人にしないで…!!)

付き添っていたタクミが、リサと直子に頭を下げた。

「ユウの母です。」

直子がタクミに頭を下げる。

「ユウ…バンドの練習帰りに道を歩いてて…小さな女の子が飛び出して跳ねられそうになったのをかばったらしいんです…。」

病室のドアをノックする音がして、母親らしき女性に付き添われた小さな女の子が、母親のスカートを握りしめながら顔を覗かせた。

「申し訳ありません…うちの娘を助けて頂いて…私がこの子から目を離したせいで、こんなことに…。」

女の子の母親は涙ながらに何度も頭を下げる。

「顔を上げて下さい…。大丈夫、息子はこんなことくらいで負ける子じゃありませんから…。」

直子は気丈に振る舞いながらも、その肩は小さく震えていた。

その母子がリサに付き添われ病室の外に出て間もなく、タクミから知らせを受けたマユとシンヤが慌てて病室を訪れた。

「タクミ、片桐の容態は?!」

マユが掴みかかりそうな勢いでタクミに問い掛ける。

「一応、処置は終わって…右手と右腕の骨折…あと、頭をかなり強く打って…まだ意識が戻らない…。かなりヤバイみたい…。」

レナはユウの傍らで、祈るようにユウの手を握りしめている。

「レナちゃん…ちょっといいかな…。」

シンヤはレナを病室の外へ連れ出し、ロビーのソファーに座らせた。