薄暗い部屋にチャイムが鳴り、誰かの訪問を知らせる。

ユウは誰にも会いたくなくて、何度もうるさく鳴り続けるチャイムの音を無視し続けた。

玄関のドアが開き、苛立ったような声がした。

「ユウ、いるんだろ?」

その声の主は勝手に部屋に上がり込み、リビングでぼんやりとうずくまっているユウに近づいて来る。

「いるなら返事くらいしろよな!!」

「シンちゃん…。」

シンヤはカーテンを開けるとユウの隣に座る。

「レナちゃんは?」

「出てったよ…。」

ユウの言葉に、シンヤは驚きを隠せない。

「今頃、新しい恋人の所にでも行ってるんじゃないか…。」

シンヤはユウの胸ぐらを掴み、ユウの頬を殴り付けた。

「痛いよ…。」

「バカか、オマエは?!レナちゃんがそんなことするわけないだろ?!」

「だってさ…。俳優のなんとかって男と抱き合ってたり、急に帰って来なくなったり…。」

「何言ってんだよ、あんな記事嘘に決まってるだろうが!!それにレナちゃんはマユの家に泊まっただけだ!!」

「え…?」

シンヤはユウから手を話すと、マユから聞いたことをユウに話し出す。

「写真集の撮影で野崎にしつこく迫られたのは事実だけど、レナちゃんがよろけて倒れそうになったのをアイツが抱き止めて、しつこく抱きしめられて嫌な思いしたって!!家に帰ってもオマエが顔も合わせてくれないって、ユウに嫌われたみたいだって言って、レナちゃん泣いてたって!!」

「……。」

すべては自分の思い違い…。

ユウは呆然とシンヤを見つめる。

「なんでオマエは思ってること、ちゃんと話さないんだよ?なんのために一緒にいたんだ?!」

「オレ……オレは……!!」

ユウの目に涙が溢れた。

「いつも、レナにいつか捨てられるんじゃないかと、怖かった…。レナもいつかあの女みたいに…!!」

「あの女…?」

シンヤはただならぬユウの言葉に眉を寄せる。

「話してみろよ…。少しは楽になんだろ?」

「シンちゃん…。」

ユウは、口元をギュッと結んだ後、静かに話し始めた。

「シンちゃん…オレは、生まれて来てはいけない子供だったのかも知れない…。」