あれから二人はなんとなく顔を合わせることもなく、数日が過ぎた。

そばにいても何も言ってくれず、自分に背を向けるユウと一緒にいることがつらくなったレナは、朝早くから仕事に出掛け、夜遅くに帰った。

それはまるで、ただ寝るためだけに部屋に戻っているようだった。


その日の夜、翌日が休みだったレナは、マユの家に泊まることにした。

マユと二人で 夕食を作り、できあがった料理をテーブルに並べて食事をした。

「レナ、ちゃんと食べてる?また痩せたでしょ?」

「うん…。最近ユウが一緒に食べてくれないし食欲ないから、つい適当に済ませたり食べなかったり…。」

「それは良くないな。今日は私と一緒なんだし、しっかり食べて!」

「うん。」

優しい味付けの煮物や温かい汁物、お浸しなど、野菜をたっぷり使った和食の献立は、疲れきったレナの心まで癒してくれるようだった。


食事を終えた二人は夕食の後片付けと入浴を済ませると、寝る支度を整えた寝室でのんびり寛いだ。

寝室のテーブルにワインを持ち込み、ワインを飲みながら、他愛もない話をする。

それはまるで、レナが現実から目をそむけようとしているようにも、核心に触れることを避けようとしているようにも思えた。

ワインのボトルが空き、マユが2本目のボトルからレナのグラスにワインを注ぐと、レナは少し考え込むようにグラスの中のワインを見つめた後、勢いよくそれを飲み干した。

そしてレナは、テーブルに突っ伏して目を閉じると、静かに呟く。

「私たち、もうダメなのかなぁ…。」

「何言ってるの…。」

マユは優しくレナの背中を撫でる。

「嫌われちゃったみたい。ユウ、何も言ってくれないの。一緒に暮らしてるのに、全然顔も合わせないんだよ、おかしいでしょ?」

レナは自嘲気味に笑う。

「もう、疲れた…。」

「レナ…。」

レナの閉じたまぶたから、涙がこぼれ落ちた。

親友のマユの前でも1度も涙を見せたことのなかったレナが、マユの前で静かに泣いている。

「泣きたい時は、泣いていいのよ…。私はずっと、レナから離れたりしないから。」

「うん…。」

レナはマユの胸で小さな嗚咽を漏らしながら泣いた。

そうして泣き疲れて眠ったレナの背中を、マユは母親のように優しく撫でた。

「レナ…ゆっくりおやすみ…。」

マユはレナをそっと布団に寝かせると、子供のように眠るレナの寝顔を見つめながら、優しく頭を撫でたのだった。