そろそろ曲の演奏に行くのかな?とレナが思った時、大物司会者が突然話題をユウに振る。

「ところで、この新しいシングルの発売日に、ユウが入籍したんだってね。おめでとう!」

「えっ?!あっ…ありがとうございます…。」

「結婚して、なんか変わった?」

「あ…いや…。なんて言うか…。」

司会者に尋ねられると、ユウは照れてしどろもどろになりながら、顔を真っ赤にしている。

「なんだよー、ハッキリ言えよー、ユウ。」

トモがユウを肘でつつく。

「そうだよ、ユウ。かわいい奥さんもらって幸せだってハッキリ言えばいいじゃん!!」

タクミがユウの背中を叩いてそう言うと、ユウは慌てた様子でオロオロしている。

ユウのそんな様子を見て、メンバーたちはニヤニヤ笑い、客席からは「キャーッ!!」「ユウ、カワイイーっ!!」と声が上がる。

「どうなの?」

「そうですね…。早く…帰りたいです…。」

照れながら小さな声でユウが答えると、司会者は満足そうに微笑んだ。

「早く帰りたいって思えるってことは、結婚して幸せってことだね。だけど、番組終わるまでは帰らないでね!」

「ハ、ハイ…。」

司会者の一言で、スタジオは温かい笑いに包まれ、ユウはまた照れて顔を真っ赤にした。

そこで女性アシスタントが、助け船のように、メンバーに演奏の準備を促した。


`ALISON´はステージに移動し、演奏の準備をすると、新曲を演奏し始めた。

レナも初めて聴く曲。

よく考えたら、ユウが家でギターを弾いているのは見ているけど、ステージでギターを弾くユウを観るのは久し振りだった。

レナは昔から、ステージで楽しそうにギターを弾くユウはキラキラしている、と思っていた。

今もそれは変わらないけど、あの頃と今では、ユウを想う自分の気持ちが違っている。

昔もユウを好きだったけど、今みたいに、ユウを見てドキドキしたりはしなかった。

(ギター弾いてるユウ…カッコいいな…。)


気が付くと、いつの間にかレナは、テレビの中のユウに釘付けになっていた。

(わっ…。いつの間にか夢中になってた…。)

`ALISON´の演奏が終わり、CMに入る前に、カメラを向けられ照れるユウのアップが画面に映ると、レナは急にドキッとしてしまう。

(何これカワイイ…。って言うかこの人、私の夫だから!!毎日一緒に暮らしてる人だから!!)

テレビに映るユウは、いつも一緒にいるユウとは違う気もする。

だけど「早く帰りたい」と言ったテレビの中のユウも間違いなく、レナの誰よりも大好きなユウだ。

(最近忙しくて、二人でゆっくりする暇もあまりなかったな…早く帰って来るといいな…。)


歌番組が終わると、レナは一人分の夕食の後片付けを済ませてお風呂に入った。