その日レナは、一人で晩御飯を食べながら、珍しくテレビを見ていた。

今日はテレビの生放送の歌番組に`ALISON´が出演するのだ。

(そう言えば…今までユウが出てる番組って、見たことなかったかも…。)

幼い頃から一緒にいるのが当たり前過ぎたせいか、二人でいる時は特に、今のユウが芸能人だと言うことを忘れてしまう。


大物司会者と出演者の軽快なトークを交えつつ、その歌番組は進行していく。

今話題のミュージシャンや人気のアイドルなどが出演していて、とても華やかだ。

(なんて言うか…私の知らない世界…?)

ユウたちも雛壇の端の方で出番を待っている。

雛壇の中段あたりに座っているユウたちを、以前グラビア撮影したことのある人気アイドルグループの女の子たちが、最上段から眺めては、ひそひそと内緒話をしている。

そんな場面をテレビ画面越しに見つけたレナは、どことなくモヤッとした気分で小さくため息をついた。

(あの子…めちゃくちゃユウのこと見てるよね…。ただのファンならいいけど…若い女の子って怖いからなぁ…。)

自分のいない場所で、自分の夫が、若くてかわいいアイドルの女の子たちに、うっとりと見つめられている場面を見ている。

(複雑な気分…。)


女性シンガーの曲の後、いよいよ`ALISON´の出番がやってきた。

「続いては`ALISON´です。」

「お願いしまーす。」

タクミがニコニコ笑って愛想を振りまくと、客席からキャーッと黄色い声が上がる。

(女の子に人気があるんだ。タクミくんってかわいい顔してるし、人懐っこいし憎めないキャラだもんね。)

大物司会者が新しいシングルの話や、アルバムのレコーディング中のこぼれ話の話題を、メンバーたちに振る。

トークの上手いメンバーたちは、ちょっとしたネタも面白く話して笑いを誘う。

人前で話すのがあまり得意でないユウは、黙ってうなずいたり、笑ったりしている。

(だよね…。ユウ、照れ屋さんだもんね。)