「あの日の部活終わったら一緒に帰ろうって、レナと約束してただろ?」

「うん。待ってたのに、ユウ、来なかった。」

「うん…実は…レナと村井が話してるの、聞いちゃったんだよね…。」

「えっ?」

「レナが、オレのことをただの…普通の幼なじみだって言ったじゃん…。村井がオレのことを好きだから協力しろとか言って…レナは、誰がオレを好きでも、オレが誰を好きでも、何も言えないって、言っただろ。」

「そうだったね…。」

「村井からオレへの手紙まで預かるし…。それで、オレってレナにとって、ただの幼なじみでしかないんだってめちゃくちゃ落ち込んで…すごく腹が立ってさ…。悔しくて、レナのこと、置いて帰っちゃった。」

「そうなの?」

「それなのにレナはわざわざ家まで手紙なんか渡しに来るし…。腹が立って、もうこんな関係壊しちまえって思って…レナを、無理やりにでもオレのものにしようって…。気が付いたら、レナを押し倒して無理やりキスしてた…。でも…レナに、泣きながら“こんなの私の知ってるユウじゃない”って言われたのがショックだった…。オレ、レナに男としても見られてないんだって…。レナは、ただの優しい幼なじみのオレだから、一緒にいたんだなって…。」

「うん…。」

「次の日、レナは学校に来なくて、オレのせいだとか、もう嫌われたかなとか、もうレナのことあきらめた方がらくになれるのかなとか、一人で考えてたら、村井が来て、レナより自分の方がオレのこと好きだって…ちゃんと男として見てるって言われて、キスされて…オレになら何されてもいいとか言われてさ…。もうわけがわからなくなって…。ちゃんとオレを好きだって言ってくれるなら…レナがそれを望んでるなら、もう誰でもいいやって…。」

「いいやって…?」

「…そのまま…成り行きで…。」

「……学校で?!」

「うん…。それがオレの、最低な初体験の記憶…。」

まさかレナにこんな話をすることになるとは、思ってもみなかった。

レナは呆然としている。

「信じられない…。」

「最低って思った?」

「ちょっと…。」

「まだこの話、続けなきゃダメ?」

「その後…サエと付き合ってるのに、他の子とたちとも噂になってたでしょ?」

「…ハイ…。」

(レナ、厳しい…。)

「オレの隣にレナがいなくなって…村井と付き合ってるって知ったら、他の子から…。」

「お誘い?」

「うん…。どうせレナには嫌われたんだし、もうどうにでもなれと思って…何人かと…。」

「…したんだ…。」

「うん…。相手が誰とか何人とか、全然覚えてないけど…。でも、レナと一緒にいたり手を繋いだりした時みたいにドキドキも全然しなかったし、何も感じなかった…。心が、そこにはなかったから…。」

「ふうん…。」

レナは膨れっ面で勢いよく水割りを飲む。