二人は指を絡めて手を握り合うと、少し照れ臭そうに顔を見合わた。

手を握り合ったまま、静かに水割りを飲む。

「ユウの不安…少しは消えた?」

「うん…。」

ユウはレナをギュッと抱きしめた。

「オレ、バカだな…。レナのこととなると、ちょっとしたことが不安でどうしようもなくなる…。あの人はオレの知らないレナをずっと見てきたんだなって思うと、オレにはわからない絆みたいなものがあるのかなって…複雑な気持ちになったりして…。」

「私は…須藤さんを恋愛感情で好きだと思ったことは、1度もない。本当に好きになったのは…ユウだけだよ。前に話したでしょ?」

「うん…お風呂の中で聞いた。」

レナはユウの言葉に、顔を真っ赤にする。

「すごく、恥ずかしかったんだよ…。一緒にお風呂に入ったのも、あんな話するのも…。」

「うん。かわいかった。それに、好きになったのも、付き合うのも…キスしたのも、全部オレが初めてだって言ってくれて…めちゃくちゃ嬉しかった。」

「もう…!」

レナはまた恥ずかしそうに頬を染める。

「ユウは、私が知らないうちにどんどん大人になってたんだもんね。」

少し膨れっ面で、レナはユウを見る。

「私も聞いていい?」

「えっ…何?」

(何聞くつもりだ?言えることかな…?)

「ユウ…すごく慣れてたよね…。私は何もかもユウが初めてだったから、年齢的にもそれが当たり前なのかなとも思いながら…他の子といろいろしてきたんだろうなって、少し複雑な気持ちだったんだけど…。」

ユウはギクッとして、顔が強ばるのを感じた。

「ユウ…初めては、いつだったの?」

「え-っと…それは、黙秘権ありますか?」

「ありません。」

「…キスは、あの時…レナが、初めてです。」

「そうなの?」

「うん…。」

想いを伝えることもできないまま、無理やり自分のものにしてしまおうとレナにキスした苦い思い出が、ユウの心に蘇る。

「あの時…なんで急にキスしたの?ユウ、急にキスなんかしたと思ったら、冷たくなるし…次の週に学校行ったら、サエと付き合ってるし…ユウ、ずっと私のこと避けてたでしょ?ずっとユウのことがわからなくて、私、すごく悩んでたのに…。」

「ごめん…。ずっと謝らなきゃと思ってたけどタイミングがわからなくて…。」

ユウはバツの悪そうな顔で頭をかく。

「黙秘権は…。」

「ありません。」

ユウは観念して、ずっと謝らなきゃと思いながら謝れなかった、高3の春の苦い思い出を話し始めた。