その時レナは、リサのマンションの部屋で段ボール箱をごそごそと漁っていた。

ニューヨークに行く前にかなりの私物を片付けたが、アルバムや思い出の詰まった物だけは、いくつかの段ボール箱にまとめて、リサに預かってもらっていたのだ。

「何が入ってるの?」

リサが箱の中を覗き込む。

「アルバムとか…。昔の思い出の物とか…。」

「あっ、あった。」

レナは高校の卒業アルバムを取り出した。

「あら、懐かしいわね。」

1年、2年、3年…。

進級時にはユウもクラスメイトと一緒に並んで写っているけれど、3年の1学期の途中で退学したユウは、その後の写真には写っていない。

「高校時代の思い出でも語り合うの?」

リサは制服姿のレナを懐かしそうに見ている。

「ユウ、途中で学校辞めちゃったから、1度も見てないんじゃないかと思って。一緒に見てみようかなーって。」

「いいんじゃない?」

箱の中には、幼い頃のアルバムも入っている。

「なんか懐かしい物がいろいろ入ってるから、持って帰るね。」

「そうね。たまには二人で思い出話に花を咲かせるのもいいんじゃない?」

「うん。」

「ああ、そうだわ。これ、少し前に須藤さんから、会社の方に届いたの。持って帰ったのはいいけど、ずっと忙しくて帰ったら疲れてすぐ寝る生活だったから、ずっと開けそびれてたのよね。」

レナは厚みのある梱包材の感触のする封筒を受け取りながら、不思議に思う。

「なんでリサの所に?私に送るなら、事務所の私宛に送ればいいのに。」

リサはキッチンで紅茶を淹れながら、軽く振り返ってレナに言う。

「レナじゃなくて私宛に届いたの。レナ、開けてみてよ。」

「うん。じゃあ…。」

レナは封筒の端をハサミで切り取り、梱包材に包まれたそれを取り出した。

「これ…。」

「なあに?写真集?」

トレイに紅茶を乗せて戻ってきたリサが、その表紙を珍しそうに眺める。

「これ、私がニューヨークに行った時にモデルをしたの。」

「どれどれ、見せて。」

「うん…。」

レナが写真集を手渡すと、リサはゆっくりと表紙を開き、そっとページをめくる。

しばらく黙って写真集を見ていたリサが、ポツリと呟いた。

「なるほどね…。だから、私宛なんだ。」

それを聞いたレナが不思議そうに首を傾げた。

「どういうこと?」