「えっ?!」

一体なんの話かとユウは思いを巡らせる。

「指輪はね、素直に嬉しかったよ。ユウが私のために一生懸命選んでくれたんだって思うと、すごく嬉しかった。」

「うん。」

「指輪…高かったでしょ?」

「いや…大丈夫だよ。」

「ホント?おっきなダイヤが入ってるけど。」

「ホント。レナに一生つけてもらえるなら安いもんだと思う。」

(うん、35万だった!!…とか言わないって…。ロンドンにいる時は金もらっても使う暇なくて貯金ばっかりしてたから、それくらいは全然大丈夫だしな…。)

「披露宴…私は別に、しなくてもいいよ。」

「えっ、なんで?!」

レナの思いがけない言葉に驚くユウ。

「私はね、リサの作ったドレスを着て、ユウの隣で、“ユウを愛して一生添い遂げます”って神様に誓えたらいいよ。それをリサと直子さんに見届けてもらえたらいいの。」

「レナ…。」

「結婚式は小さい教会でもいい。私、人前で生い立ちとか二人のなれそめとか流されるのも、母親への手紙を読まされるのも、正直やだ…。すごく恥ずかしいから…。たくさんの人に見られるのも…やっぱり恥ずかしいの。」

(あっ、そうだった!レナって…。)

「どうせなら、仲のいい友達とか日頃お世話になっている人とか…極親しい人たちを招待してパーティーとか…。みんなで楽しめる方がいいもんね。」

「なるほど…。」

ユウが感心したようにうなずく。

「ねぇユウ。私たちは私たちらしいやり方で、やっていこうよ。他のみんなと同じにしなきゃいけないって決まってる訳じゃないんだから。私たちは私たちなりに、母親への感謝の気持ちを伝えればいいと思う。それから、大好きな人たちに心から祝福してもらえたら、それが一番嬉しいと思うの。」

飾り気のないレナの言葉で、ユウは自分がしっかりしなきゃと思うあまりに、世間の常識とか一般的なやり方ばかりを気にしていたことに気付く。

(ああ…だから、違和感…。)

「オレが悩んでることとか…レナにはなんでわかっちゃうんだろう?」

ユウが不思議そうに言うと、レナはユウの目を見つめて微笑んだ。

「わかるよ…。私、ユウが大好きだもん。」

まっすぐに想ってくれるレナが愛しくて、ユウはレナの体をギュッと抱きしめた。

「さすが、オレの奥さん。」

「奥さん…。」

レナは恥ずかしそうに頬を染める。

「まだ、でしょ?」

「そうだった…。じゃあ、いつにする?」

二人でいつ入籍しようかと相談しながら、ユウは、二人一緒ならどんなことも幸せだと思う。

(幸せって、こうやってひとつずつ二人で作っていく物なのかも…。)