ユウが息苦しくなるほど緊張のピークを迎えた時、社長室のドアが開いてリサが現れた。

「お待たせ!!」

リサはいつものようににこやかに笑って、ユウとレナの向かいに座る。

「ユウくん、怪我はもう大丈夫なの?」

「ハイ、おかげさまで…。この通り、すっかり良くなりました。」

「それは良かった、安心したわ。」

秘書が3人分のコーヒーを運んでくると、リサはコーヒーを一口飲んで、二人を見る。

「それで、今日は二人そろってどうしたの?」

(ついにこの時が来た…!!)

ユウは緊張で、心臓が口から飛び出しそうになりながら、覚悟を決めてソファーから立ち上がると、リサに向かって深々と頭を下げた。

「その節はいろいろとご心配をお掛けしてスミマセンでした。それで…その後二人でいろいろ話し合いまして…その…。」

ユウは思いきって顔を上げ、まっすぐにリサを見た。

「レナと…結婚、させて下さい。」

(言った…!!ついに言った…!!)

緊張の極限のようなユウの顔を見ると、リサは優しく微笑んで頭を下げた。

「ハイ、娘をどうぞよろしくお願いします。」

(えっ?!意外とあっさり…。)

ユウが拍子抜けして唖然としていると、リサがおかしそうに笑った。

「ユウくん、緊張し過ぎ。」

「あ…いや…。」

しどろもどろになるユウを見て、レナはくすくす笑い出す。

「だから、大丈夫って言ったのに。」

「だってほら…。緊張しない方がおかしいって…。」

「ユウくんがレナをもらってくれるなら、私は安心よ。大事にしてやってね。」

「ハイ、それはもう…!!」

勢いよく答えるユウに、リサは嬉しそうに笑って、レナを見た。

「良かったわね、レナ。小さい頃から大好きなユウくんが、お嫁さんにしてくれるって。」

「うん…。」

レナは幸せそうに笑う。

(一人で緊張して、なんかオレ、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…。)

「私、結婚式で、リサの作ったウエディングドレスが着たい。ね?」

レナはあっさりとそう言うと、ユウを見て微笑んだ。

「お願いします。」

ユウはペコリと頭を下げる。

リサは嬉しそうに笑って、二人を見た。

「もちろんよ。二人の衣装は私が作る。それが、私の夢だったの。」

「リサさん…。ありがとうございます…。」

(良かった…。レナも、リサさんも、笑ってる…。)

二人の笑顔を見て、ユウは心底ホッとした。

(リサさんも、オレの母親になるんだな…。)

愛しい人の母親が、自分の母親になる。

自分の母親もまた、レナの母親になる。

(こうやって、繋がって行くんだな…。)