このあすなろ抱き状態…


ただ先生たちがいる以上はそんなに大きな声も出せない。



「じゃあ、次の部屋に行きましょうか」



その言葉が聞こえた後、足音が遠ざかる音が聞こえ、そしてドアが閉まる金属を確認した。


先生たちは去って行ったようだった。



「…………」


「…………」


「…………」


「出て行ったよ!ちょっと離してよ!」



私は声や荒げ、吉田くんの腕をつかんで身体からもぎ取ろうとした。


でも離れない。



「……やだね」


「ちょっとやだねじゃないよ!先生たち行ったんだから。ちょっと離してよ!!」


私が力を入れると同時に吉田くんも力を入れてきている。



「もうちょっとこのままでいさせて…」



そう切なそうな声を出してくる吉田くん。


私は未だかつてないシチュエーションから心臓が破裂しそうにドキドキした。


嫌だ、こんなやつに。



「……お前、結構胸あるんだな」


「ーーーー!?」



さすがに私は今持っている私の最大の力を使って吉田くんの腕の中から逃げ、布団から脱出した。



「さっサイテー!!!!
この変態!!!!!!!!
性悪男!!!!!!!!!!」


「なんだよ。どうせ減るもんでもないんだから、いいだろ」



吉田くんは布団から半身起こし、髪をかきあげていた。



「よくない!!!なんでこんな意地悪ばっかしてくるの?私に何か恨みでもあるの?」



「…さぁな」



さぁなって……!!!!



「ただお前見てると無性にイライラして仕方ないんだよ。
………お前を見てるともっとイジメたくなるし、もっと泣かせたくなる」



そう言いながら立ち上がり、吉田くんは私の方に近づいてきた。



「……私、みんなのとこ戻るね」



そう言ってドアに向かおうとしたのだが。



「待てよ」



その声とともに壁に当たる鈍い音がした。


私をドアに行かせないように吉田は私の目の前に手をついた。


壁ドンが流行ったあのドラマを見た時から心に描いていた憧れのシチュエーション。


でも現実はこんなにも違うなんて想像もしていなかった。



「……ちょっとどいてよ」


「……どかない」


「私のこと嫌いなんでしょ?吉田くんの考えてること、よく分かったから。
もう手どけてよ」



私が吉田くんが壁に置いた手を掴んだその時だった。



……!?



吉田くんの顔が私に近づき、



そっと



唇が触れた。



一瞬なにが起こったのか



私には理解ができなかった。



「…………お前のこと、嫌いだから」



吉田くんは私の手からUNOを取り、部屋を出て行った。



私は足に力が入りなくなり、その場にしゃがみ込んで動けなくなってしまった。