白く細い手に触れた時、結音のまつ毛が細かく揺れた。


「結音……?」


その瞼は何か重たい物を押し上げるように、ゆっくりゆっくりと開いて行く。


「ゆ……結音!」


思わず立ち上がり、握っていた手に力を込める。


結音は完全に目を開け、そして状況を掴むように目だけで周囲を見回した。


「ちょ……ちょっと待ってろ! 今、先生とおばさんを呼んでくる!」


そう言い、体の向きを変えた。


その時だった。


結音が俺の服をひぱった。


俺はすぐに行動を止めて、振り返る。


「どうした?」


そう聞く俺に結音は瞬きをくりかえした。


茶色い瞳が俺の姿を捉える。


……え?


俺は一瞬にして自分の体温が奪われて行くのを感じる。


茶色い……瞳……?


ドクンッと心臓は高鳴り、ジワジワと汗が流れて行く。


結音は普段茶色のコンタクトレンズを使っていた。


コンタトレンズを外すと、その瞳は濡れた黒色をしていて……。