昼間俺を攻撃しようとした人形とは思えないくらいだ。


でも、油断してはいけない。


薫子は気分次第で豹変する。


俺は手早く出かける準備をして部屋を出た。


「お待たせ」


玄関に出ると薫子が俺を不思議そうな顔で見て来た。


「そのかばん、なに?」


そう聞かれ、ドキッとする。


右手に持ったいつものスポーツバッグ。


この中にはもしもの時のための道具が入っている。


素手で薫子とやりあう事になった時に使うものだ。


「財布や携帯が入ってる。ズボンのポケットに入れていると落としそうで怖いから、かばんごと持って出ようと思って」


適当な言い訳をする。


「そうなんだ」


薫子はそれ以上突っ込むことなく、すぐに興味をなくしたようだ。


俺はホッとして、薫子と一緒に家を出た。