夕飯を食べる時もテレビを見ている時も、視線はチラチラと時計へと向けられていた。


今の時刻は夜の8時過ぎ。


外ではもう人が歩いているような気配はほとんどない。


時々車の音が聞こえてくるくらいだ。


学校や仕事を終えて、ほとんどの人が家にいる時間帯。


俺はリビングのソファから立ち上がった。


「風呂に行ってくる」


「お湯の温度少し熱くして出したから、調節してね」


母親がテレビのお笑い番組から視線を離さずに俺に言った。


「わかった」


俺はうなづき、脱衣所へと向かった。


脱衣所にある鏡が湯船からの湯気で少し曇っている。


俺は鏡を手のひらでこずった。


滲んで浮かぶ俺の顔。