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それから俺は結音の顔を少しだけ覗いて病院を後にした。


気持ちが固まり、歩調がつい速くなっていく。


でも、計画がうまくいく保証はどこにもない。


もし山下陽子が姿を見せず、薫子が攻撃してきたら?


その時は2人とも命の危険にさらされるだろう。


狩りに殺されたとしても、それは当然のように通り魔事件として処理され、迷宮入りになる。


どうにか、それだけは避けたかった。


死ぬにしても意味のある死に方をしたかった。


俺は家に戻るとすぐに自室へと入った。


部屋の隅には不気味な姿に成り果てた薫子が座っている。


暗い雰囲気をまとったそれは見るのも耐えられない姿で、俺はすぐに視線をそらした。


薫子はジッと俺を見つめたままでなにも言わない。


何もしてこない。


危害が加えられないのは嬉しいけれど、何を考えているのかわからないので気味悪くも感じた。


俺はそのまま何も言わず、両親のいるリビングへと下りたのだった。