『俺は、お前なんか好きじゃない』


そう言い放った俺に薫子は目を大きく見開いた。


まるで時間が止まってしまったかのように、その場から動かない。


俺はもう、どうなってもよかった。


これで殺されて終わるなら、それでもいい。


魂は山下陽子のものとなる。


山下陽子は俺を必死で逃がそうとしていた、そんな彼女になら魂をくれてやってもかまわないと思った。


山下陽子が生き返っても、世界が悪い方向へ進む事はないだろう。


そう思って目を閉じると、とても穏やかな気分になった。


結音がすぐ隣にいた頃のように落着いている自分がいる。