目の前がゆがみ、諒がどんな表情をしているのかもわからない。


笑っていてほしい。


滑稽な俺の姿を見て、バカなヤツだと笑ってくれていれば、少しは救われる。


「本当に……お前はバカだよ! あんな人形なんて必要なかった! 結音も美奈も俺もお前を見離したりなんかしなかった!」


諒が怒鳴る。


その声は微かに震えている。


薫子が来てから俺たちの関係に亀裂が入り、そしてそれぞれの仮面が剥がれ落ちはじめていた。


俺の仮面も、もうすぐ限界が来そうだった。


「なぁ諒。俺本当は疲れていたんだ」


「……は?」


「結音を待つこと。いつ目が覚めるかわからない女の子の彼氏として過ごす事」


「燈里……」


その気持ちは、結音の目覚めを待っている諒も理解できるのだろう。


諒は静かだった。