俺の耳元でカッターが風を切る音が聞こえた。


ブンッと音がした瞬間、頬にピリッとした痛みが走る。


軽く顔をしかめ頬に触れる。


指先に赤い血が付いていた。


少し切れたみたいだ。


「わかった……。結音と別れる」


俺は深呼吸をし、そっと目を閉じてそう言った。


このままでは美奈や諒だけでなく結音も危ない。


それなら、このまま結音から離れる方がいいかもしれない。


「本当に?」


薫子の声色が明るくなり、俺は目を開けた。


そこには微笑んでいる薫子。


手にはまだカッターナイフが握られているが、一旦は落着いたようだ。


俺は胸をなで下ろす。