『お願いします。殺さないでください。人形を破壊してください』


そのくらいの事なら、相手に伝えることがきっとできる。


もちろん、山下陽子の帰りを待っている人がそれを簡単に受け入れるとは思えない。


可能性は極めて低い。


だけどこのままなにもせずにただ死ぬのを待つよりは、随分ましなことのように思えた。


そして俺は再び歩き出した。


今度は山下陽子の素性をどうやって調べるか、という事を考えながら。