昨日の出来事は夢ではなかった。


その事実が首にシッカリと残っている。


「おはよう燈里」


後ろからそう声をかけられて、俺は一瞬飛び上がるほどに驚いた。


後ろには薫子が立っている。


いつもと変わらぬ笑顔を浮かべている。


俺はもうなにがなんだかわからなくなっていく。


どうして笑顔でいられるんだ?


昨日あんな事があったのに、どうして普通に話しかけてくるんだ?


相手が人形だからだとしても、ちょっと異常すぎる。


人間に似た感情があったはずだ。


購入した時には嫉妬心や羞恥心を見せていたハズだ。


それなのに、今はそのかけらもなかった。