けれど俺は返事をせずに歩き出した。


国匡さんの連絡先がわかればいいけれど、俺はそれも知らなかった。


ショップの電話番号は知っていたけれど、その店がなくなっているのだから通じるワケがない。


どうすればいいんだろう。


頼れる存在がいなくなった途端、噂の真相が気になり始めてくる。


あんな噂を全部信じているワケではない。


けれど、万が一本当だったら?


薫子が俺を殺し、魂を奪うのだとしたら?


「くそっ!」


俺は転がっていた空き缶を蹴飛ばした。


缶は大きく弧を描き、シャッターにぶつかり派手な音を鳴らして落下した。