途端に、薫子が俺の首に両腕を絡みつけてきた。


甘い香りが鼻をくすぐる。


「怖いのあたし」


消え入りそうな声で薫子が言う。


「怖い?」


俺は薫子の体重を支えるように抱きしめて、そう聞き返す。


「うん」


「怖いって、なにが?」


そう聞くと、薫子は黙ってしまった。


聞かないほうがよかったのだろうか?


そう思っていると、しばらく黙っていた薫子がゆっくりと口を開いた。


「あなたは人間。あたしは人形」


と、呟く。