走ってもどうせ間に合わない



そう諦めていた



「やべーよ、12時10分過ぎたぞ
なんか罰があるって聞いたけど、大丈夫か?」


弱い栗原を心配そうに見つめる俺だが



特に気にしてなさそうな表情の栗原



なんでこういう時だけ強そうなんだ



そんなことはどうでもいい。



俺はケータイが震えてることに気がつく



早希からだった



なぜか俺は罪悪感が湧く



うちの学校は少し校則が厳しくて



昼休みしかケータイをいじってはいけない



その間早希は俺を心配しながらも連絡を我慢していたんだと




そして何より俺はうさぎと遊んでいたことの罪悪感がある


「悪い、彼女から電話きたから先行ってて」



栗原にそう伝えると首をなぜか斜めに振った


どういう意味かわからなかったが構わず向かう先を背にして電話に出た



「もしもし?」


『もしもし、蓮?どこにいんの?』


少し怒りっぽく心配そうに早希は聞いた


電話の外では田倉の笑い声とのんの怒っている声が聞こえたのできっと馬鹿にされたのんが田倉に怒ったのだろう



そんな場面を想像してしまうのだから改めて遅刻をしてしまったことを自覚する


「ごめん、また寝坊してさ
昼休みまでに着きそうもないんだ」


『えー?昼休みまでに着かなきゃなんか罰があるんじゃないの?
今までそんな遅刻した人蓮だけじゃない?』



と少し笑いながら早希は言った


いや、俺だけじゃないんだ



と言いたい気持ちを抑えながら



「他にもいるでしょ
まあ罰があろうとなんだろうと眠いもんは眠いんだ」


俺はわっはっはと遅刻をごまかすように笑う



早希は納得してなさそうに『もう』と言っていた



『なるべく早く来てね、待ってるから』


「はいよー」



お互いにじゃあねと言いながら電話を切った



ふぅ



とりあえず早希には連絡したからオッケー



俺はもう一度向かう先の方へ体を向けた




その時だった




先行っててと言ったはずなのに


栗原が普通に居たことに今になって気づいた



「え?先行けって言ったのに」



栗原の目はまだ怯えていた