【完】山崎さんちのすすむくん




「本当にみたらし一皿で良かったんですか?」


暖簾をくぐり、通りを歩き出すと沖田くんは改めて小首を傾げくる。


「ええ、十分です」

「へー山崎さんって少食なんですね」


や、普通やろ。


沖田くんの内腑が可笑しいねん。あんなけ食うたやつ、そのほっそい身体のどこいってん?


島田なんか見てみぃや、同じ甘味好きでもどでかい体しとるやん。普通はあぁなるやろ。


それともなんや、男前は肥えんのか?


男前にはそんな素晴らしい付加価値がついとんか?


のう島田、これがほんまもんの神秘やで。


「やはり最後の締めは歯応えのあるおこしですよね、楽しみですっ」


摩訶不思議! 底無しの胃袋を持つ男、や。










「へぇー! これが大坂のおこしですか、浅草寺の物とは少し違いますねぇ」


初売りでごった返す店の中に並ぶおこしを見つめ、沖田くんは目を輝かせる。


「この粟おこしと岩おこしはどのような違いがあるんですか?」

「これは」
「はい! こちらの粟おこしは米を粟のよに砕いて原料としてましてさっくりした食感と香ばしさが特徴ですわ! 一口かじれば胡麻の風味がお口いっぱい広がりまっせ。ほんでもって岩おこしは更に米を細こうすることで生まれる岩のよな硬さが持ち味! 甘さん中にピリッと効いた生姜の辛さが絶妙なおこしになっとります! 浅草の雷おこしなんぞには負けまへんで! なんならお味見してってください! さぁさどーぞ此方へ!」

「わぁ是非!」


……浅草寺の一言で商人魂に火ぃつけやったな。


沖田くんのあれは素ぅやんなぁ。計算やったら俺監察としての自信なくすわ……。