【完】山崎さんちのすすむくん


脈絡のないその言葉にふと視線を戻せば、苦笑いを浮かべた沖田くんが頭を掻いた。


「すみません。正直に言えばいつも無表情で黙々と監察の任をこなす貴方があまり好きではありませんでした」


まぁ、監察の仕事は言うたら身内の粗探しやさかいな。それが粛清に繋がることもある。


隊士に好かれるようなもんとちゃうのは百も承知や。


それに逆にあんま仲良しこよしなってもあかんと思とるし。


人間親しい奴には無意識にも贔屓目になったりする。


故に訛りは使わんねや。


こっちからあえて壁を作ることで相手も無闇に踏み込んでこんくなる。


色々癖のある幹部連中は兎も角、その辺の平隊士らには効果は抜群や。


……無論土方副長は例外であるが。


「最近でこそ少し空気が柔らかくなりましたけど、前は話し掛けてくれるなと言わんばかりでしたし、何で土方さんはあの人に目を掛けるんだろうって思っていました」


でも、と沖田くんはそこで言葉を区切り、手にあった餡団子を口に入れた。


「……、この前見逃してくれた時意外だなって思って。もっと人間味のない人だと思っていましたから。まぁそれで少し話してみたくなったんですよね」


あーあの時か。


てかたかがあんくらいで……こん人の俺の印象ってよっぽど悪かってんな。


まぁこん人は人一倍警戒心も強いし当然か。新選組の番犬、やもんな。


近藤局長の、山南総長の、土方副長の忠実な犬。


一度刀を抜けば冷たい白刃を容赦なく振るう、麗しの修羅の二つ名を持つ男。



……こうしとると普通の青年なんやけどな。


「でも実際話してみるとこれまた意外に可愛い人だなって思って。よく見てみれば反応が薄いだけで結構わかりやすいし」


かわ……!


クスクスと笑うその人にさっきとはまた違ったむず痒さを覚えるも、まぁ不思議と不快ではなかったりする。


「やっぱり食わず嫌いはいけませんね、一度は食べてみないとっ」

「食べ物に例えるのは止めてください。なんかそれ、可笑しな意味に聞こえそうで嫌です」

「そうですか? それよりも何で話し方戻しちゃうんですかっ。もうあれで良いじゃないですか」


拗ねたように口を尖らせるその人に、俺は少しだけ目を細めた。


「まぁ、そのうち」